【知財情報】知財高裁令和3年(行ケ)第10096号のご紹介

第1 事案
データがない数値限定を設計的事項として、進歩性を否定した事案

第2 概要
1.特許請求の範囲(請求項1)
【請求項1】
青色光を放出する発光素子と、
前記青色光を緑色光及び赤色光に変換する量子ドット材料、樹脂および散乱剤を含み、前記発光素子が放出する前記青色光を白色光に変換して放出する光変換層と、を含み、
前記散乱剤は、前記光変換層の全体重量に対して10重量%以下で含まれており、
下記(1)および(2)の少なくとも一方を満たす光源:
(1)前記白色光は、ピーク波長が518nm~550nmの間にあり、半値幅は90nm未満である前記緑色光成分と、ピーク波長が620nm以上である領域にあり、半値幅が49nm以下である前記赤色光成分とを含む;
(2)前記白色光の色座標において、赤色頂点は0.65<Cx<0.69かつ0.29<Cy<0.33の領域に位置し、緑色頂点は0.17<Cx<0.31かつ0.61<Cy<0.70の領域に位置する。

2.「散乱剤が光変換層の全体重量に対して10重量%以下で含まれている」 との構成について(一部抜粋)
本願明細書の段落【0136】(【表12】)によると、散乱剤(ZnO)の含有量は、1重量%、3重量%又は5重量%とされているところ、白色光の輝度は、散乱剤の含有量が3重量%の場合が最も高いとされている。また、光変換層の全体重量に対する散乱剤の含有割合の臨界的意義に関し、本願明細書には、単に、「10重量%以下で含まれてもよい。」(段落【0036】)、「10重量%以下含まれることが好ましく、1重量%以上5重量%以下含まれることがより好ましい。」(段落【0055】)、「10重量%以下であることが好ましい。」(段落【0129】)などの記載があるのみである。しかも、上記段落【0136】に記載された実施例を含め、本件補正発明の実施例として記載されている同含有割合の最大値は、6重量%(段落【0140】(【表13】))にすぎず、本願明細書には、同含有割合が10重量%を超える場合の実験結果についての記載は全くみられない。
以上によると、光変換層の全体重量に対する散乱剤の含有割合を10重量%以下とすることには、特段の臨界的意義はないものといわざるを得ない。加えて、光変換層内の散乱剤、赤色量子ドット材料及び緑色量子ドット材料の含量比を調節することにより、白色光の色座標を調節することは可能であり、また、本願明細書の段落【0137】によると、散乱剤の含量を調節することにより、白色光の輝度等を調節することも可能であると認められ、周知文献1の段落【0116】に「ある好ましい実施形態において、散乱体の濃度範囲は0.1から10重量%である。」との記載があることも併せ考慮すると、光変換層の全体重量に対する散乱剤の含有割合は、当業者において、光変換層により得られる白色光をどのようなものにするかに応じ適宜設計することのできたものである。

第3 考察
請求項に数値限定の記載をする際は、単に好ましいという記載だけではなく、臨界的意義を主張できるように、実験データを付けておくのが良いと思われる。

                                                                       正木 裕士

藤川特許事務所

大阪事務所

大阪市中央区今橋2-5-8 トレードピア淀屋橋8階 電話:06-6203-5171

尼崎事務所

尼崎市長洲西通1丁目1番22号 藤川ビル2階、3階 電話:06ー6481ー1297

詳しい事務所案内はこちら

メールでのお問い合わせはこちら