外国出願のよくあるご質問

お客様よりよくいただくご質問を掲載しています。ここにないご質問に関しましてはお問い合わせフォームよりお問い合わせください。

Q.
PCT出願とは、どのような制度ですか。
Q.
EPC特許出願とは、どのような制度ですか。
Q.
共同体商標制度とは、どのような制度ですか。
Q.
マドリッド商標出願とは、どのような制度ですか。

Q.PCT出願とは、どのような制度ですか。
A.

ある発明に対して特許権を付与するか否かの判断は、各国がそれぞれの特許法に基づいて行います。したがって、特定の国で特許を取得するためには、その国に対して直接、特許出願をしなければなりません。PCT国際出願は、このような煩雑さ、非効率さを改善するために設けられた国際的な特許出願制度です。

手続の流れ

  1. 国際出願
     PCT国際出願では、国際的に統一された出願願書(PCT/RO101)をPCT加盟国である自国の特許庁に対して特許庁が定めた言語(日本国特許庁の場合は日本語若しくは英語)で作成し、1通だけ提出すれば、その時点で有効なすべてのPCT加盟国に対して「国内出願」を出願することと同じ扱いを得ることができます。
  2. 国際調査
     国際出願をすると、出願した発明に類似する発明が過去に出願された(公知となった)ことがあるかの調査(国際調査)が、すべての国際出願に対して行われます。その際には、その発明が進歩性、新規性など特許取得に必要な要件を備えているか否かについて審査官の見解も作成されます。
  3. 国際公開
     国際事務局は、優先日(出願日または優先権主張日のいずれか早いほう)から18カ月経過すると、ただちに国際出願の内容などを、公開します。
  4. 国際予備審査
     出願人が国際予備審査機関(IPEA。世界の代表的な特許庁が担当)に対して国際予備審査を請求しない場合には、国際調査見解書(ISO)に「特許性に関する国際予備報告(第Ⅰ章)(IPRP)(Ⅰ)」という新名称が付せられます。
     他方で出願人が、ISOに対して反論したいといった理由により、国際予備審査を請求する場合には、IPEAが作成した国際予備審査報告書は、新たに「特許性に関する国際予備報告(第Ⅱ章)(IPRP)(Ⅱ)」と併称されます。
     国際予備審査請求は、国際調査報告の送付日から3カ月か、優先日から22カ月のうち、いずれか遅い日まで行なえます。
     指定国はIPRPを有力な参考資料にして、自国の法令に基づき審査できます。国によってはその国際調査報告書・見解書を基礎として特許認可に至ることがあります。一方で、PCT国際出願は、あくまで国際的な「出願」手続であるため、国際出願の発明が、特許を取得したい国のそれぞれで特許として認められるかどうかは、最終的には各国特許庁の実体的な審査に委ねられています。
  5. 国内段階への移行
     PCT国際出願の最後の手続は、国際出願を各国の国内手続に係属させるための手続となります。PCT国際出願が国内手続に係属された後は、PCT国際出願もそれぞれの国の国内法令によって処理されます。この「各国の国内手続に係属させる」手続をPCTでは、「国内移行手続」と呼びます。 
     出願人がISRやIPRPなどの検討の結果、手続をさらに進める場合には、優先日から30か月以内に、指定国に翻訳文の提出をし、国内出願手数料を支払うなど、その指定国の国内段階へ移行するのに必要な手続をします。
     それ以降は、各国の制度にしたがって審査が進められます。
     したがって、PCTを利用する場合には、パリ条約上の優先権を利用して最初の出願から12か月以内に第二国に出願する場合よりも、さらに18カ月も時間的余裕をもって、出願準備ができるというメリットがあります
Q.EPC特許出願とは、どのような制度ですか。
A.
ヨーロッパ特許条約(第一条約、EPC=European Patent Con- vention )

 EPCは広汎なヨーロッパ諸国を対象とする条約であり、1973年に調印され、1977年に発効しました。
 従来、出願人はヨーロッパ各国ごとの公用語で別々に特許出願しなければなりませんでしたが、EPCでは、英、仏、独語のいずれかでヨーロッパ特許庁(European Patent Office=EPO)に単一の出願手続をすることにより、希望する複数国(指定国)での特許取得が可能になりました。なお、英国は2020年にEUを離脱していますが、欧州特許庁(EPO)はEUの機関ではないため、英国のEU離脱は現在の欧州特許制度には影響を与えず、英国をカバーする既存の欧州特許も影響を受けません。
 もっとも、EPOが付与するヨーロッパ特許は、指定国の「国内特許の束」にしかすぎず、その効力・侵害などは各国の特許法で定められ、国によって効力・侵害の有無などが異なることがあります。
 EPCは、参加国をヨーロッパ諸国に限定した閉鎖条約であるため、わが国は加盟できません。しかし、出願人の資格を制限していないため、日本人でもEPC出願をして、ヨーロッパ特許を取得できます。

Q.欧州連合商標(EU商標)(旧欧州共同体商標)とは、どのような制度ですか。
A.

 欧州共同体商標制度(CTM= Community Trade Mark )は、1993年に採択されたEU商標規則に基づき、1994年3月に発効した制度です。2016 年 3 月 23 日の上記施行に伴い、「欧州共同体商標」の名称が「欧州連合商標(EU商標)」に変更され、「欧州共同体商標意匠庁(OHIM)」の名称が「欧州連合知的財産庁(EUIPO)」に変更されました。この制度の最大の特徴は、出願人が1つの言語で、1つの出願を、1つの官庁に提出することにより、EU27カ国全域で統一的な保護を受けられることです。EU商標は1出願で各国での個別の商標登録でなく、加盟国を「一地域」として扱い、1出願でこの地域全体に1つの商標権の効力を及ぼす制度です。EU 商標は、単一性を有するものであり、欧州連合全域において等しい効力を有するものです。またEU 商標の登録、移転、取消、無効または放棄は、欧州連合全域においてのみ効力を有するものとされます。(ちなみに、英国は2020年に離脱したため、現在はEU商標に英国は含まれず、個別に出願又は後述のマドプロ出願をすることになります。)
 この制度はEU加盟国だけでなく、パリ条約加盟国およびWTO加盟国国民にも開放されているので、これらの国民は共同体商標を出願・取得することが可能です。

Q.マドリッド商標出願とは、どのような制度ですか。
A.
制度の趣旨

 複数の国で商標権を取得するには、各国の手続にしたがって個別に出願しなければならないのが原則です。
 しかし、国際的な経済活動を行なう企業にとっては、複数国に対して一括して商標権を取得・管理できる制度があれば便利です。
 このような目的の条約として、「標章の国際登録に関するマドリッド協定の議定書」(マドリッド・プロトコル。以下「マドプロ」という略語を用います)があります。

 2022年7月6日現在、「マドプロ」の締約国は112カ国となっています。(特許庁ホームページ参照

 プランド保護に活発なヨーロッパを中心に積極的に利用される傾向にあります。

制度の概要

「マドプロ」は、出願人が本国の商標登録または商標登録出願を基礎として、商標権を取得したい国(指定国)を明示して、世界知的所有権機関(WIPO)国際事務局に国際出願をして国際登録を受けることにより、その指定国でも商標の保護を受けることができる、という制度です。
その手続の概略はつぎのとおりです。

  1. 国際出願
     国際出願マドリッド協定議定書とは、締約国の一国(本国)に登録又は出願されている商標を基礎に、当該本国の官庁(本国官庁)を通じ、保護を求める締約国(指定国)を明示して世界知的所有権機関(WIPO)国際事務局に国際登録出願し、同事務局が維持管理する国際登録簿にその標章が国際登録されることにより、その指定国に同時に出願するのと同等の効果を得ることができるという制度です。つまり、まず日本商標出願/登録が必要です。国際出願の言語は英語または仏語です。本国官庁が日本の場合は、英語です。各指定国に翻訳を提出する必要はありません。
  2. 国際事務局での手続
     国際事務局は、方式審査した後、国際登録し、これを国際公表します。
     つぎに国際事務局は、国際登録した旨を指定国の官庁に通報します。
  3. 指定国官庁での手続
     指定国の官庁は、各指定国の国内法令に基づき審査を行い、国際登録された出願の保護を拒絶する場合には、2.の通報の日から12カ月または18カ月以内にその旨を国際事務局に通報通知します。審査の結果、保護が認められるのであれば「保護認容声明」がWIPO国際事務局経由で国際登録の名義人に送付されます。また、その標章に保護を与えることができない場合には、「暫定的拒絶通報」が同事務局経由で国際登録の名義人に送付されます。この期限内に暫定的拒絶通報が送付されなかった場合は、その指定国においてその標章は自動的に国際登録日から保護が認められます。なお、暫定的拒絶通報送付後、拒絶理由の解消等により保護が認められると判断された場合は、指定国官庁はWIPO国際事務局経由で「保護認容声明」が国際登録の名義人に送付されます。暫定的拒絶通報後、拒絶理由が解消しなかった等の場合は、指定国官庁は「拒絶確定声明」を同事務局経由で国際登録の名義人に送付します。つまり、国際登録されても、各国別に審査が行われ、指定した全ての国で商標権が保護されるわけではありません。 
  4. セントラルアタック
     国際登録日から5年以内に、本国における基礎出願が拒絶されたり、基礎登録が無効・取消になった場合などには、国際登録も取り消されます。
     その際、救済措置として、指定国において国際登録を国内出願へと変更できます。国際登録簿に取り消しが記録された日から3月以内に、条件を満たす当該締約国への商標登録出願をする必要があります。
  5. 存続期間・更新
     国際登録の存続期間は国際登録日から10年ですが、更に10年の期間にわたって何回でも更新することができます。

マドリッド商標出願のメリット

 この商標国際登録制度を利用すれば、WIPO国際事務局における国際登録簿により権利関係が一元管理されるので、同事務局へ以下の手続を行う場合、各指定国への個別の手続を省略できます。
・存続期間の更新
・所有権の移転
・名称・住所の変更申請
 また、指定国で拒絶理由が発見されずに登録になる場合は、その指定国においては現地代理人の選任は不要です。そのため、個別出願に比べて費用が大幅に軽減されることが期待できます。したがって、今後はマドリッド商標出願が多くなるものと思われます。

藤川特許事務所

大阪事務所

大阪市中央区今橋2-5-8 トレードピア淀屋橋8階 電話:06-6203-5171

尼崎事務所

尼崎市長洲西通1丁目1番22号 藤川ビル2階、3階 電話:06ー6481ー1297

詳しい事務所案内はこちら

メールでのお問い合わせはこちら